フランス・リヨンは「世界の美食の都」と呼ばれる街。じつはこの街には、フランス料理に魅せられた日本人シェフが数多く活躍しているのをご存じでしょうか。なかにはミシュランの星を獲得した実力派もいて、タカオ・タカノ氏(2つ星)とツヨシ・アライ氏(1つ星)のように、日本人シェフがこの美食の街で確かな評価を勝ち取っています。
フランスの食材と技術に、日本人ならではの繊細さや美意識が重なると、ほかにはない料理が生まれます。リヨンを旅する日本人にとっては、その挑戦を味わう喜びがあり、ときに恋しくなる本格的な和食に出会える安心感もあります。
この記事では、リヨンで日本人シェフが腕をふるう5軒を、星付きのガストロノミーから気軽なビストロノミー、本格和食まで幅広く紹介します。
この記事を書いた人
リヨン出身のフランス人。日本在住。日本人旅行者向けに、初めてのリヨン旅行で迷いやすいポイントをわかりやすく紹介しています。
なぜリヨンに日本人シェフが多いのか
リヨンは20世紀の巨匠ポール・ボキューズを生んだ、フランス料理の聖地のひとつです。周囲にはブレス産の鶏やシャロレー牛、近郊の野菜、2大ワイン産地(ボジョレー/ローヌ)といった最高の食材がそろい、料理人にとって理想的な環境がそろっています。
そこに、素材を大切にし、繊細な手仕事と引き算の美学を得意とする日本人シェフの感性が加わると、フランスの伝統に新しい風が吹き込まれます。実際、リヨンで星を得た日本人シェフは少なくなく、地元メディアでも「フランスの食文化に魅せられた日本人シェフたち」として注目されています。
旅行者の視点で見れば、「日本人シェフのフレンチ」は、初めてのフランス料理でも親しみやすく、味の感覚が伝わりやすいという魅力があります。
このリストの見方
今回紹介する5軒は、料理のスタイルがそれぞれ異なります。
- 仏日ガストロノミー(星付き):タカオ・タカノ/オ・キャトーズ・フェヴリエ
- 仏日ビストロノミー(気軽め):サクシフラージュ/フレール
- 本格和食:TOMO
星付きやガストロノミーは予約が基本、価格も幅があります。リヨンのレストラン全般の選び方(予算・予約・ランチのコツ)は、こちらの記事で詳しくまとめています。

価格・営業時間・定休日は変わりやすいため、本記事の数値は目安です。訪問前に必ず公式サイトで最新情報を確認してください。
1. タカオ・タカノ(Takao Takano)|2つ星に輝く仏日の到達点

写真:Takao Takano/The World's 50 Best
リヨンの日本人シェフを語るうえで、まず名前が挙がるのがタカオ・タカノです。シェフの高野卓央氏は、フランス料理をベースにしながら、引き算の美学ともいえる澄んで繊細な味わいを追求。2013年の開業以来、評価を高め続けてミシュラン2つ星に輝いています。
派手さよりも素材の核心を見せる料理は、日本人の味覚にも深く響きます。リヨンの美食シーンの中心、6区にあり、平日昼の「Envie」ランチコースは2つ星を体験する入口としておすすめです。
店舗情報
- エリア:リヨン6区/33 Rue Malesherbes
- 最寄り:メトロA線 Foch
- 料理・評価:現代フランス料理(仏日)/ミシュラン2つ星
- 予算の目安:昼のコース 約50ユーロ〜/夜 約120〜220ユーロ(要確認)
- 定休日:日・月(要確認)
- 予約:公式サイト・電話から必須
2. オ・キャトーズ・フェヴリエ(Au 14 Février)|ヴュー・リヨンの1つ星

写真:Au 14 Février
世界遺産の旧市街ヴュー・リヨン、ルネサンス様式の街並みのなかにある1つ星レストランがオ・キャトーズ・フェヴリエです。シェフのツヨシ・アライ氏は京都出身。フランスの食文化に魅せられた日本人シェフのひとりで、極上の食材(ミエラル社の家禽、和牛など)を、食感・苦み・酸味の妙で引き立てます。
メニューは事前に内容を知らされない「おまかせ」スタイルで、2か月ごとに一新。一皿ごとに驚きがある、五感で楽しむコースです。店名(2月14日=バレンタイン)にちなんだロマンティックな演出も魅力で、写真のバラをかたどったデザートはその象徴です。
店舗情報
- エリア:リヨン5区(ヴュー・リヨン)/36 Rue du Bœuf
- 最寄り:メトロD線 Vieux Lyon
- 料理・評価:現代フランス料理(仏日)/ミシュラン1つ星
- 営業:夜は火〜土、昼は金・土のみ(要確認)
- 予算の目安:おまかせコースのみ(要確認)
- 予約:公式サイトから必須
3. サクシフラージュ(Saxifrage)|祖母の味から生まれた仏日キュイジーヌ

写真:Saxifrage 公式サイト
女性シェフ、トキタ・ユミカ氏が手がけるサクシフラージュは、「皿の上はフランス料理、味わいは日本」をコンセプトにした一軒です。塩・砂糖・脂を控えめにし、健康に気を配って料理した祖母や母の味からインスピレーションを得ているのが特徴。やさしくも芯のある味わいが楽しめます。
看板料理は、写真の牛肉のタタキ。フランスの技法と日本の感性が出会う、サクシフラージュらしい一皿です。ガイドブック『ゴ・エ・ミヨ』にも掲載される実力派。ベジタリアン対応は48時間前までに相談を。
店舗情報
- エリア:リヨン6区/129 Rue de Sèze
- 最寄り:メトロA線 Masséna(約270m)
- 料理・評価:仏日キュイジーヌ/ゴ・エ・ミヨ掲載
- 予算の目安:コース料理(要確認)
- 予約:公式サイトから推奨
4. フレール(Flair)|和の美意識が息づくビストロノミー

写真:Flair 公式サイト
「星付きは敷居が高い」という人に試してほしいのがフレールです。シェフのワタナベ・ヒロユキ氏が手がける仏日ビストロノミーで、フランス料理に味噌や紫蘇、みりんといった和の要素をさりげなく溶け込ませます。タラの低温調理 味噌サバイヨンソースなど、和とフレンチが自然に響き合う料理が並びます。
魅力は、確かな技術を手の届く価格で楽しめること。コースは42〜58ユーロほどで、肩肘張らずに仏日の創作料理を味わえます。プレスキル南部、ペラーシュ駅にも近い落ち着いたエリアにあります。
店舗情報
- エリア:リヨン2区(プレスキル南部)/84 Rue de la Charité
- 最寄り:メトロA線 Ampère-Victor Hugo/Perrache
- 料理・評価:仏日ビストロノミー
- 予算の目安:コース 約42〜58ユーロ(要確認)
- 営業:火〜土の昼・夜(木曜の昼は休み/要確認)
- 予約:推奨
5. TOMO(トモ)|リヨンで味わう本格和食
旅の途中、ふと本格的な和食が恋しくなったら——そんなときに頼りになるのがTOMOです。シェフの畠山智広氏と久慈洋介氏が手がける、本格的で正統な日本料理の店。フレンチアレンジではなく、日本で食べるような繊細で丁寧な和食が味わえます。
昼は日替わりの和定食、夜は6品のおまかせコース2種とアラカルト。落ち着いた静かで端正な空間で、リヨンにいながら日本の食卓に帰ったような時間を過ごせます。海外で頑張る自分への、ちょっとしたご褒美にもぴったりです。
店舗情報
- エリア:リヨン6区/7 Rue Pierre Corneille
- 最寄り:メトロA線 Foch ほか(要確認)
- 料理:本格和食(昼は和定食、夜はおまかせコース)
- 定休日:日・月(火〜土の昼・夜営業/要確認)
- 予約:電話から推奨
日本人旅行者にうれしいポイント
日本人シェフの店には、旅行中ならではの安心感があります。
- 味の感覚が伝わりやすい:素材を生かした繊細な味づくりは、日本人の口に合いやすい
- 本格和食でひと息つける:旅の後半、こってりしたフランス料理に疲れたときの「逃げ場」になる
- 日本の食文化への誇り:海外で評価される日本人シェフの料理は、訪れること自体がうれしい体験
- 挑戦と発見:和とフレンチが出会う一皿は、日本でもなかなか味わえない驚きがある
いずれの店も人気が高いため、予約は早めに。星付きやおまかせコースの店は特に、数日〜数週間前の予約が安心です。
よくある質問
日本人シェフの店なら日本語は通じますか?
店やスタッフによります。シェフが日本人でも、サービスはフランス語・英語が中心のことが多いです。基本的な予約や注文は英語、または予約サイトを使うとスムーズです。
星付きを少しでも手頃に楽しむには?
平日のランチが狙い目です。タカオ・タカノのように、夜より大幅に手頃なランチコースを用意している店があります。
本格的な和食が食べたくなったらどこへ?
TOMOがおすすめです。フレンチアレンジではない、正統派の日本料理が味わえます。旅の途中で和食が恋しくなったときに頼りになる一軒です。
ベジタリアンやアレルギーには対応していますか?
店によります。サクシフラージュのように事前相談(48時間前など)で対応する店もあります。予約時に必ず伝えておきましょう。
まとめ:リヨンで「日本人シェフの一皿」を
リヨンには、2つ星・1つ星のガストロノミーから、気軽なビストロノミー、本格和食まで、日本人シェフが活躍する多彩な店があります。フランスの食材と日本の感性が出会う料理は、リヨン旅行ならではの特別な体験です。
記念日には星付きを、気軽な夜にはビストロノミーを、和食が恋しくなったらTOMOを——その日の気分に合わせて選んでみてください。



